前骨間神経麻痺・後骨間神経麻痺
症状
前骨間神経と後骨間神経とは、前腕の橈骨と尺骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経です。
前骨間神経は肘の辺りで正中神経から分岐し、主に親指と人指し指の第1関節を動かす筋肉を支配しています。後骨間神経は肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸ばすいくつかの筋肉を支配しています。
どちらも皮膚を触った感覚に異常がないことが特徴です。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも起こります。
近年、神経炎が原因で神経が腫れて、神経の一部がちぎれそうな状態になる“砂時計様のくびれ”が話題になりました。感覚障害がないため、運動神経が障害される神経内科の病気と間違えられることもあります。これらの麻痺にはご注意ください。詳しくは整形外科医にご相談ください。
原因と病態
■神経炎の特徴
肘周りが痛み、肘が伸ばしづらい日が続きますが、3~7日ほどで痛みが消えていき、その後麻痺が生じていることに気づきます。
肩周辺では、似た症状のもので、三角筋などが萎縮してしまう神経痛性筋萎縮症があります。
■前骨間神経麻痺
前骨間神経麻痺は親指と人指し指の第1関節を曲げることができなくなりますが、皮膚の感覚障害は起こりません。
その際、親指と人指し指で丸を作らせると親指の第1関節がそり返り、人指し指の第1関節もそり返った状態が、涙のしずくに似た形となるため、“涙のしずくサイン”と呼ばれるサインの陽性になります。
前骨間神経麻痺は“涙のしずくサイン”と感覚の障害がないことで診断します。確定診断には、筋電図検査、レントゲン検査、MRI検査など必要に応じて行います。
■後骨間神経麻痺
下垂指になり、皮膚の感覚障害が起こらない場合は、後骨間神経麻痺であると考えられます。下垂指は、手首の曲げ伸ばしは可能ですが、手指の付け根の関節を伸ばすことができなくなり、指のみが下がった状態になります。
後骨間神経麻痺は下垂手と感覚の障害がないことで診断します。確定診断には、筋電図検査、レントゲン検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行います。
治療
神経炎など原因不明なものや回復の可能性のあるものは保存的治療を行います。
神経炎で手術を行うかは、議論のあるところです。
ほとんどの場合は回復しますが、数%の方は回復しない場合もあります。中には神経のくびれがはっきりと存在することもありますので、およそ3~6ヵ月ほど経過観察して回復しない場合は手術が行われています。手術は、神経剥離、時には神経のくびれ部の切除・縫合などの手術が行われます。
神経の手術で回復する可能性が少ないものは他の筋肉で動かせるようにする腱移行手術を行います。
詳しくは整形外科医にご相談ください。