ドケルバン病
親指を広げると手首の親指側の部分に腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がります。ドケルバン病はその親指側の線である短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある腱鞘を通る部分に生じる腱鞘炎です。
症状
手首の親指側にある腱鞘とそこを通過する腱に炎症が起きている状態で、腱鞘の部分で腱の動きが制限され、手首の母指側が痛み、腫れて熱を持ったりします。親指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が生じます。
※短母指伸筋腱は主に親指の第2関節を伸ばす働きをする腱の1つで、
長母指外転筋腱は親指を広げる働きを主とする腱の1つです。
■短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)
親指を伸ばす働きを主とする腱の一本です。
■長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)
母指を広げる働きを主とする腱の一本です。
■腱鞘(けんしょう)
短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通るトンネルです。
原因と病態
■原因
妊娠出産期の女性や更年期の女性に症状が出やすく、手の使いすぎやスポーツ、指を良く使う仕事の人にも多いのも特徴になります。
■病態
親指の使いすぎで負荷がかかり、腱鞘が分厚くなったり、腱の表面がいたみ、そこから刺激し、悪循環が生じてしまうと言われています。
特に手背にある腱鞘は、2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるため腱の通り道が狭くなってしまう狭窄が生じやすくなります。
診断
「フィンケルシュタインテスト変法」と呼ばれる、腫脹や圧痛があり、親指と一緒に手首を小指側に曲げると痛みが増すかどうかを調べ、診断できます。
正確には、親指を小指に向けて引っ張ったときに痛みが強くなるかどうかで診断します。(フィンケルシュタインテスト)
自分で調べるには「岩原・野末のサイン」という手首を直角に曲げ母指を伸ばしたときに疼痛が増すかかどうかで判定することができます。
治療
シーネ固定を含む患部の安静、投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効と言われています)などの保存的療法を行います。
改善がみられない場合や再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術を行います。その際、隔壁の切除と橈骨神経浅枝の愛護的操作が必要となります。