整形外科でのMRI診断・検査:検査でわかること
MRI検査とは?
MRI検査とは、体内の状態を断面像として撮影する精密検査です。痛みやしびれの原因となる病巣を探したり、がんの有無や転移を調べたりする目的で検査をおこないます。MRI検査はベッドに寝た状態でトンネル状の装置の中に入り、磁力や電波を利用して体の内部を画像化します。MRI検査は、X線ではなく磁気を使って撮影します。そのため、放射線による被ばくの心配がありません。また、腹部の検査以外は絶食や下剤を服用する必要もありません。人体への影響が少なく、安心して検査を受けられます。
MRI検査でわかること
MRI検査はがんの有無や脳卒中などの脳血管疾患の検査というイメージがあるかもしれませんが、整形外科でも必要に応じてMRI検査をおこないます。MRIの画像所見や問診、その他の検査結果を総合的に判断し、診断や治療方針を決めていきます。MRI検査でわかることを詳しく解説します。
■ 痛みやしびれの原因
痛み・しびれは、視診や触診だけでは原因の特定が難しいことがあります。MRI検査は神経の圧迫や軟骨変性の発見に優れています。そのため、MRI検査の画像所見をもとに痛み・しびれを引き起こしている原因を特定します。たとえば、下肢や腰部に痛みやしびれなどの症状が現れる腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)や腰部椎間板(ようぶついかんばん)ヘルニアはMRI検査で病巣や進行程度を確認し、治療方針を決めていきます。
■ 筋肉や腱の軟部組織
MRI検査は筋肉や腱・靱帯など、レントゲンでは描出できない軟部組織の診断を得意とします。
スポーツ障害では靱帯損傷や筋断裂、膝関節の半月板損傷などの診断に適しています。また、40歳以上の5人に1人がかかるといわれている変形性膝関節症は、MRI検査で軟骨のすり減り具合や関節部の炎症を確認します。当院では、変形性膝関節症に対する再生医療もおこなっております。
■ 脳血管疾患のリスク
頭部MRIは、脳梗塞や脳出血など脳血管疾患の病変を調べることができます。また、くも膜下出血の原因となる動脈瘤や血管狭窄の程度を検査することで、病気を早期発見し、脳血管疾患のリスクを軽減できます。
■ がんの早期発見
MRI検査は、体の正常な組織とがん組織を区別しやすい検査です。そのため、骨軟部などCT検査では区別しにくい部位のがん発見に有効です。一部のがんは早期発見により、適切な治療を受けることで死亡リスクを軽減できます。
MRI検査にかかる時間
MRI検査にかかる時間は、30〜40分程度です。撮影部位や条件により、検査時間が前後する場合もあります。造影剤を使用した検査では、さらに時間がかかる可能性もあります。MRI検査は体内の水分をもとに、膨大な情報を画像化します。そのため、レントゲンやCT検査などに比べて検査時間が長いというデメリットがあります。ただし、横になった状態で検査をおこなうため、検査中に苦痛やストレスを感じることはありません。
MRI検査の費用
MRI検査は撮影する部位や造影・非造影により費用が異なりますが、実質負担で約25,000円です。健康保険が適用できるため、3割負担で約8,000円です。各種保険にも対応しておりますので、費用に関してご質問がありましたらお気軽にご相談ください。
MRI検査の流れ
MRI検査は以下の手順で検査をおこないます。当院では、事前にMRI検査の流れや注意点を説明させて頂きます。
①問診票の記入
②順番が呼ばれるまで待合室で待機
③更衣室で着替え
④金属類のチェック・問診票の確認
⑤造影ルート確保(造影剤を使用する場合)
⑥検査開始
MRI検査の前は更衣しやすい衣服を着用するようにお願いします。ネックレスなどの金属類は外して、お化粧も落としておくとスムーズに検査をおこなえます。検査する部位によっては、絶食などが必要になる場合があります。
検査にあたっての留意点
MRI検査は、受診ができない方や受診前に相談が必要な場合があります。特に下記に該当する方は事前に医師や看護師へ相談して頂くようお願い致します。
受診ができない人
MRI検査は強力な磁気を発生する装置に入ります。そのため、貴金属は吸着事故やアーチファクト(画像の乱れ)の原因となるため、持ち込みはできません。腕時計やネックレス、ピアスなどは更衣室で取り外してください。コンタクトレンズやメイクをしたままの検査もできません。なお、体内に金属類が入っている方も受診ができない場合があります。金属が機器へ引き寄せられる吸着事故は、重大な怪我を引き起こす危険があります。医師や看護師の指示に従って頂きますよう、ご協力をお願い致します。
■心臓ペースメーカを装着している
心臓ペースメーカの植え込み術を受けられている方は誤作動やモード変更の可能性があるため、検査できません。最近はMRI対応の心臓ペースメーカもあります。その場合は、MRI対応のペースメーカ対応であると証明できる手帳やカードなどをご準備のうえ、検査前に医師にご相談ください。
■人工内耳を装着している
人工内耳は機器内部に磁石を有しています。MRI検査の磁力により、人工内耳が引っ張られることで痛みを引き起こしたり、磁石部分が飛び出たりする恐れがあります。
■体内に金属が入っている
人工関節や骨折部を固定している金属プレートやスクリューが体内にある方は事前にお申し出ください。20年以上前に手術を受けられた方は、磁力に反応する金属が使用されているケースがあります。また、心臓の人工弁、歯科の義歯やインプラント治療をされている方はMRI検査ができない場合があります。金属の種類によってはMRI検査が可能ですので、検査前に医師にご相談ください。
受診前にご相談が必要な人
金属類の持ち込み以外でもMRI検査を受けられない場合があります。下記に該当する場合は問診時にご相談ください。
■妊娠中またはその可能性がある
原則として、妊娠またはその可能性がある方はMRI検査ができない場合がありますので、検査前に医師にご相談ください。
■入れ墨がある
金属を含む塗料を使用した刺青(タトゥー)やアートメイクは火傷の危険があります。そのため、MRI検査ができない場合がありますので、検査前に医師にご相談ください。
■閉所恐怖症
MRI検査は30〜40分程度、トンネル状の装置の中へ入ります。そのため、閉所恐怖症の方は不安や恐怖を感じる場合もあります。しかし、腰部や下肢の検査は検査する部位だけしか装置内に入らない場合もあります。そのため、それほど圧迫感を感じることはありません。検査時に大きな音が発生しますが、体への影響はありませんのでご安心ください。
■小児のMRI検査
小児のMRI検査も可能ですが、30〜40分程度機器の中で静止できないと検査がおこなえません。保護者が付き添われる場合は、検査前に医師にご相談ください。
■その他の留意点
パップ剤やテープ剤などの貼り薬や湿布は火傷の可能性があるため、事前に剥がしておくようにお願いします。マスカラやファンデーション、アイライナーなどの化粧品も検査時に火傷を引き起こす成分が含まれていることがあります。検査の前に化粧を落として頂くようお願いします。また、検査中はアメやガムなどの飲食もできません。検査に不安を感じる方は医師や看護師が説明させて頂きますので、お気軽にご相談ください。