膝関節の手術とは?変形性膝関節症の手術方法や治療について詳しく解説!
膝関節の仕組みとは
膝関節は、3つの骨と2つのクッション(半月板・軟骨)が組み合わさって動いています。この3つの骨とは、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)、すねの骨である脛骨(けいこつ)、膝の皿といわれる膝蓋骨(しつがいこつ)のことです。平面になっている脛骨の関節部分に、大腿骨の丸い関節部分が乗っかるようなかたちになっています。この関節部分には、クッションの働きをする半月板と靭帯があり、衝撃を吸収したり、膝関節が滑らかに動く手助けをしています。これらの骨とクッションがあることで、膝関節をスムーズに曲げ伸ばしできるのです。
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膝関節の代表的な疾患
日常生活の動作において膝関節は重要な役割を担っていますが、同時に負担がかかりやすい箇所でもあります。数ある疾患のうち、膝関節の代表的な疾患を紹介します。
変形性膝関節症
膝関節の最も代表的な疾患として、変形性膝関節症が挙げられます。変形性膝関節症は、加齢や過度な負担などによって軟骨がすり減ることで、膝に痛みがともなう病気です。特に加齢によるケースが多く、中高年に多く発症する傾向にあります。
初期・中期の症状では、階段の昇り降りや正座するときなど、特定の動作で痛みを感じることがあります。次第に症状が悪化すると、歩くことも辛くなり、正常時でも痛みがともなうようになります。
進行形の病気のため、初期症状の段階で改善することが大切です。
なお、当ページでは最も代表的な膝疾患である変形性膝関節症の治療方法に焦点をあてて解説していきます。
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関節リウマチ
関節リウマチは、自己免疫機能の異常により関節に痛みや炎症がおこる疾患です。膝関節だけでなく、指や手首などに症状があらわれます。症状が悪化すると徐々に関節が変形し、骨や軟骨が壊れていきます。関節リウマチは自己免疫機能の異常が原因ですが、異常をきたす根本原因はまだ解明されていません。
初期症状では、起床後30分程度のこわばりや、関節の痛みや腫れ、熱や倦怠感などがあらわれます。症状が進むと関節が変形し、日常生活の動作に支障がでてしまう関節疾患です。
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変形性膝関節症の手術はどんなもの?
変形性膝関節症が重症化し、平常時でも痛みがともなう場合、手術による治療が検討されます。変形性膝関節症の手術による治療法は、主に次の3つです。
人工関節置換術
人工関節置換術は変形した関節の表面を金属などでできた人工の部品で置き換える手術方法です。
ひざ全体が大きく変形し、痛みが強い場合や、立ったり座ったりする動作や歩行困難など、膝の痛みや変形が日常的に支障をきたす場合におこなわれます。 人工関節は人体にある膝関節の仕組みと同じく、大腿骨・脛骨・膝蓋骨の役割を果たす3つの部位で構成され、膝のスムーズな曲げ伸ばしを再現できるように作られています。
人工関節は基本金属でできていますが、脛骨部の表面と膝蓋骨部はポリエチレンという素材です。ポリエチレンは硬さと耐久性のある優れた素材のため、軟骨の代わりを果たします。
人工関節置換術は、日常生活で生じる関節の痛みを取り除くことができ、QOL向上につながります。ただし可動域が狭まるため、深く曲げ伸ばしが必要な正座や、ひざに負荷のかかる激しい運動は制限されます。
人工関節置換術は、全面的に人工関節に換える全置換術と、部分的に人工関節に換える単顆置換術の2種類があり、進行の程度や疾患によって使い分けられます。
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術は膝の中に内視鏡という直径1〜4ミリの小さなカメラを入れておこなう手術方法です。
この手術では、高機能の内視鏡カメラと光ファイバーを挿入するため、膝関節の周りに2〜3つ程度の小さい穴を作り、関節の中を生理食塩水で満たします。
その後関節内を内視鏡で確認しながら変形した半月板や軟骨、増生した骨膜や骨棘の除去をおこないます。テレビモニターに拡大して映し出すことにより、状況を細かく観察しながらおこなうことが可能です。
ほとんど組織を傷めずに関節内の障害を治療できる手術法であり、手術の際の傷が非常に小さいため傷口が目立たないことと、 手術後数日で歩行が可能となり早期に社会復帰できるのが最大の魅力です。関節の変形や痛みがそれほどひどくない場合におこなわれます。
高位脛骨骨切り術
高位脛骨骨切り術とは脛骨の形を変えてO脚を矯正し、膝の内側にかかる負担を軽減させる手術方法です。
骨を切除することで、O脚によって内側に偏っている重心を外側に移動させます。角度を少し変化させることで、比較的きれいに残っている外側の軟骨を利用でき、ひざ関節の温存が可能です。
術後、足の形はO脚からX 脚に変わります。矯正した骨の部分がくっつくまで2〜3ヵ月を必要としますが、正座や農作業などの重労働、スポーツ活動ができるまでに回復します。
膝の変形が中程度で内側にとどまっており、40〜60歳代の比較的若く、日常生活の活動性が高い人が治療の対象となります。
高位脛骨骨切り術には2種類の術式があります。内から外に向かって骨切りして矯正するのがオープンウエッジ法で、外側からくさび状に骨切りして短縮するのがクローズウエッジ法です。変形の度合いによってどちらかを選択します。
手術だけじゃない!変形性膝関節症の治療方法
変形性膝関節症の重症度のグレードは、1〜4まで分類されています。変形性膝関節症の治療法は手術だけでなく、他にも「保存療法」と「再生療法」があり、この重症度のグレードに応じて検討されます。
保存療法
保存療法は、症状が軽い初期段階におこなわれる治療法です。主に運動や薬の服用などで痛みを和らげることを目的としています。
適度な運動やマッサージ、ストレッチは血行を促進し、痛みを和らげる効果が期待できます。
また薬物療法では炎症を抑えたり、痛みを緩和したりする内服薬・外用薬を使います。変形性膝関節症においては、痛みを和らげるためにヒアルロン酸注射がよく用いられます。
再生療法
再生療法は、保存療法と手術療法の間に位置する、痛みの原因を取り除くことを目的とした治療法です。主に軽度〜中度の症状の方が対象となります。腕から採取した自身の血液から成長因子を抽出し、患部に注入することで自己治癒力を高めます。変形性膝関節症はもちろん、傷ついた靭帯や半月板などの改善も期待できます。大がかりな手術や入院は避けたい方や、ヒアルロン酸注入だけでは効果が感じられない方は、その間に位置する再生療法も選択肢の1つです。
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まとめ
膝関節の治療法はこれまで、薬や注射を用いる保存治療か、切開や骨削りがともなう手術療法しか選択肢がありませんでした。しかし近年は、自身の細胞で組織を修復させて膝の痛みを改善する「再生療法」が注目を集めています。保存療法の何度も施術が必要なヒアルロン酸注入や、手術療法のように入院や身体への負担がともなう手術ではなく、気軽に受けられて痛みの根本解決が期待できる再生療法は、膝関節の治療の新たな選択肢です。
膝関節の痛みにお悩みの方、入院や手術は避けたい方は、選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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監修医師紹介
西新宿整形外科クリニック
沼倉 裕堅 院長
Hirokata Numakura