関節注射の活用法 注意点とは?
関節注射による痛みの緩和
膝関節全体は関節包という袋に包まれており、関節包の内側にある骨膜からは関節液が分泌されて内部を満たしています。
この関節液が潤滑油の役割を果たし、膝のスムーズな動きを支えます。ところが、膝に炎症が起きてしまうと、炎症を鎮めるためにこの関節液が大量分泌されてしまい、元来ヌルヌルとしている関節液がさらさらとした水のような状態になってしまいます。 こうした状態になると関節の潤滑油としての役割が十分に果たせず、余計に痛みを生むという悪循環に陥ります。
この関節液の主成分がヒアルロン酸であり、関節注射は主に少なくなったヒアルロン酸を補い、膝の痛みを緩和する目的において使用されます。
注射自体には軟骨を再生させたり、増やすという効果はありません。あくまでも潤滑油替わりに補給して関節の動きをスムーズにするのが目的です。
関節注射の種類について
関節注射には2種類あり、一つ目が潤滑油の代わりのヒアルロン酸。もう一つがステロイド剤です。
通常整形外科でよく行われる注射はヒアルロン酸の注射で、関節液を補い、関節内の動きを良くすることで痛みを和らげる目的で使用されます。
明らかに効果を実感している人や希望者に行われることが多く、3週間に一回注射するのを5回繰り返すというのを一つのターンとして行います。
一方ステロイド剤は激しい痛みや炎症を感じている人に対して行われ、関節内の炎症を直接鎮める効果があるので非常に高い効果が実感できます。 ただし、何度も行うと逆に軟骨を痛めてしまう可能性があるので、症状が激しい時のみに使い、最低でも3ヵ月の間隔をあけ、使用は年に二回までと制限を設ける必要があります。
関節注射の注意点
関節注射の最も危険な合併症は感染症です。関節の中は関節包で包まれているため、本来血流が少なく、極度の無菌状態が保たれています。その分、感染に対する防御力が少なく、非常に感染症を起こしやすい場所なのです。
注射による感染症は実際に数千例に1回程度あると言われています。 その為、関節注射を受けるときは前もって準備が必要です。感染は注射をした後の針穴から菌が入るのではなく、注射をするときに皮膚の表面にいる細菌を針で関節内に押し込むことによって起こります。 その為、前日はきちんと入浴し、石鹸で患部をよく洗って清潔にしておくことが大切です。
注射をしたところが赤くなる、痛みが強くなった、腫れる、熱が出た、などの症状があるときは感染が疑われるためすぐに受診するようにしましょう。
監修医師紹介
西新宿整形外科クリニック
沼倉 裕堅 院長
Hirokata Numakura