膝関節水腫とは?水が溜まる原因や放置するリスク、治療法を紹介

公開日 2023.12.3 最終更新日時 2024.9.12

膝関節の病気として「膝に水が溜まる」という症状を耳にしたことがあるかもしれません。そもそもなぜ膝に水が溜まるのでしょうか?
今回は膝関節水腫の原因や症状、放置するリスク、なってしまった場合の治療法をご紹介します。

膝関節水腫とは?

膝関節水腫とは、関節内にある関節液の量が異常に増え、関節内にたまってしまう症状のことです。一般的に「膝に水が溜まる」と表現されるこの「水」は、実際には関節液を指しています。

関節液は無色透明で、非常にヌルヌルとした粘り気を帯びており、関節に滑らかさと弾力を与え、軟骨には栄養を与える役割を持っています。関節液は関節内にある滑膜という部分で作られており、滑膜は新しい関節液を作ると同時に古い関節液を吸収しています。

関節内の関節液の量は、一定に保たれていることが通常です。 ところが何らかの原因で、関節液が過剰に分泌されてしまうことがあります。その結果、次第に膝の皿の上部に関節液が溜まっていき、膝関節水腫を引き起こします。関節液が増えると、関節内部の圧力が上がることで関節が不安定になり、さまざまな症状を生じさせます。

膝関節水腫が疑われる症状

下記のような症状があれば、膝関節水腫の可能性があります。

  • 膝の腫れや痛み、だるさを感じる。
  • 膝の皿が浮いている感じがする。膝に異物感を感じる。
  • 捻ると膝に激痛が走る

膝関節に水(関節液)が溜まると、膝が腫れて熱を持ち、痛みを感じます。特に階段を上ったり、膝を捻ったときに痛みを強く感じることが多いようです。 膝関節水腫が起こると膝の表面がぶよぶよとして、膝の皿の形がわかりにくくなります。そのまま放置すると関節内の圧力が高まり、可動域の狭まりや、関節包の肥大、靭帯のゆるみが起こりやすくなります。

膝関節水腫になる原因は滑膜の炎症

膝関節水腫の根本原因は、滑膜の炎症です。滑膜が炎症を起こすことで、関節液が過剰分泌してしまいます。

滑膜の炎症は、膝関節内の擦れてすり減った軟骨や骨のカスや欠片が、関節包を刺激することで生じます。炎症が起こると関節包からサイトカインという炎症を強める化学物質が放出され、さらに炎症が悪化します。

滑膜の炎症を招く骨や軟骨のすり減りは、変形性膝関節症や関節リウマチ、痛風などの病気で引き起こされます。また、スポーツやケガによる外傷や骨折も、滑膜の炎症を招く恐れがあります。

膝に溜まるのは関節液であることが多いですが、なかには血が溜まるケースもあります。これは膝の怪我が原因で起こることが多く、半月板損傷や靭帯損傷などの内出血が起こった場合に見られます。 関節内の色や成分を調べることによって病気の原因がわかることもあり、治療の際に重要な手掛かりになります。

水の色からわかる主な関節疾患

溜まっている水の色から、おおよその関節疾患を予測することが可能です。
色別に考えられる主な関節疾患を紹介します。

透明な黄色:変形性膝関節症

水が透明な黄色だった場合、変形性膝関節症である可能性があります。変形性膝関節症は、加齢や過度な負荷による軟骨のすり減りで、膝に違和感や痛みが生じる進行型の関節疾患です。骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のトゲが発生し、骨が変形したりします。
中高年によく見られる疾患で、初期の段階で痛みを自覚するようになります。次第に水が溜まって腫れる、重くてだるいなどの症状も現れます。

変形性膝関節症の詳細はこちら>

褐色:半月板・靭帯損傷

水が褐色で血液のような赤色をしている場合、半月板や靭帯損傷の可能性があります。膝の外傷による内出血が起こることで、水が褐色になります。膝に体重をかけた状態でひねりや衝撃を加えることで、半月板や靭帯を損傷することがあり、特にスポーツなどの怪我から生じるケースが多い傾向です。

半月板損傷の詳細はこちら>
靭帯損傷の詳細はこちら>

白濁色:関節リウマチ

水が濁った白色の場合、関節リウマチの可能性があります。関節リウマチは、自己免疫の異常などにより関節に痛みや腫れが生じる病気です。特に30〜50代の女性に多くみられます。
白濁色だった場合、関節リウマチの他、感染症や痛風の可能性もあります。

関節リウマチの詳細はこちら>

水は抜いた方がよい?放置するリスク

膝が動きにくい、痛みが強いなどの場合は、早めに水を抜いた方がよいでしょう。溜まっている水を放置すると、さらに炎症が悪化し、痛みが増してしまう可能性があります。

「水を抜くとクセになる」のは本当?

水を抜くとクセになるという表現は、実は間違いです。水を抜くこと自体は痛みを緩和する治療の一環であり、それ自体が膝に悪影響を及ぼしているわけではありません。
ただし、水を抜くことは炎症を抑える根本解決にはならず、炎症を抑えない限り、水は溜まり続けてしまいます。
水を抜くことで一時的に痛みを抑えることは可能ですが、根本原因の炎症を止めるために、他治療の検討も必要です。

水を抜いたあとに気を付けること

医療機関で膝の水を抜いたあと、いくつかの注意点があります。まず当日のお風呂やシャワーはなるべく避けてください。

また注射した患部の痛みが数日続く場合がありますが、時間の経過とともにおさまってきます。しかし膝に熱感があったり、腫れがひどく悪化した場合は、感染している可能性があるため、医療機関を再度受診しましょう。

膝関節水腫のセルフチェック方法

膝の水が溜まっているかどうかは、セルフチェックできます。
特に下記のような症状に当てはまる場合は、膝関節水腫の疑いがあるでしょう。

  • 膝に腫れぼったさや重さがある
  • 突っ張るような感覚がある
  • 膝の曲げ伸ばしが難しい
  • お皿が浮くような感覚がある

膝より少し上を片方の手で抑えながら、もう一方の手は膝の皿を上から軽く押してみてください。何か異物感があったり、お皿が浮くような感覚がないでしょうか。 何らかの異物感があった場合、膝関節水腫を起こしている恐れがあるため、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

水を抜かずに自力で治せる?

膝関節水腫は、炎症を鎮めない限り、自然治癒することは難しいといえます。熱を帯びている場合は、患部を冷やすことで炎症をある程度抑えられます。その他、サポーターを付けて膝の負担を軽くしたり、適度なストレッチで痛みの軽減も可能です。

しかしいずれも根本的な解決とはなりません。水を抜かずに放置すると、痛みが悪化するため、自己判断で治そうとせずまずは医療機関を受診して、適切な治療を受けることが重要です。

膝関節水腫の主な治療方法

主な治療法としては、ヒアルロン酸注入や外科的治療、再生医療などが選択肢となります。病気の進行度によって、適切な治療法が異なります。

定期的な水抜きやヒアルロン酸

症状が初期段階の場合は、定期的な水抜きやヒアルロン酸注射などの保存療法で、様子をみることもあります。水抜きやヒアルロン注射で痛みを緩和して膝の潤滑を改善し、並行してリハビリで適度に動かすことで、自然治癒するケースもあるからです。
ただし、膝の症状が中期や末期になると、他の治療が有効となることもあります。

外科的治療(人工膝関節置換術など)

強い痛みで歩くことも難しい場合、外科的な治療が必要になってきます。特に変形性膝関節症や関節リウマチの場合は、人工膝関節置換術という手術が検討されます。変形して損傷した関節の一部を切除し、代わりに人工関節を固定する手術です。関節の痛みが除去され、関節の機能回復も目指せます。
ただし、外科手術となるため、身体への負担や入院がともない、費用もやや高額となります。

再生医療

これまで骨が変形してしまった中期症状の場合、外科的な治療を中心におこなうのが主流でした。しかし、最近では再生医療という新しい選択肢が登場しています。
再生医療は、患者さまご自身の細胞を利用し、加工と培養をおこなったものを患部に注入する新しい治療法です。炎症を抑えて痛みを改善するのはもちろん、損傷した組織を修復する効果も期待できます。
水抜きやヒアルロン酸注射のような通院は不要で、1回の治療で長い効果の持続性があります。また身体の負担は少なく、入院も不要です。何度も通院したくない方、手術や入院は避けたい方などに有効な治療法になります。

再生医療についての詳細はこちら>

まとめ

膝関節水腫は滑膜の炎症が原因であり、膝の水を放置するとさらに炎症や痛みが悪化するリスクがあります。セルフチェックや応急処置で、いくらか痛みを緩和できる場合もありますが、自己判断の処置でかえって悪化する可能性もあります。必ず医療機関を受診しましょう。

西新宿整形外科クリニックでは、膝関節の再生医療を取り扱っています。細胞培養加工施設(厚労省届出済み)を有する当院であれば、日帰りで治療することも可能です。水抜きで何度も通いたくない方、手術には抵抗があるという方は、再生医療を新たな選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

監修医師紹介

沼倉 裕堅 院長

西新宿整形外科クリニック

沼倉 裕堅 院長

Hirokata Numakura

運営者情報

運営クリニック:西新宿整形外科クリニック

住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-21-3西新宿大京ビル7階
お問い合わせ:0120-962-992

関連記事