「牛乳を飲めば身長が伸びる」とよくいわれますが、結論からいうと、牛乳をたくさん飲むだけでは身長は伸びません。身長を伸ばすには、複数の要因が関係しています。
今回は牛乳と身長の関係、1日に必要な摂取量、そして身長を伸ばすために必要な栄養素や生活習慣について医学的な観点から解説します。

 

身長を伸ばすなら「牛乳だけ」ではNG

牛乳に含まれるカルシウムには、直接的な成長促進作用はありません。子どもの成長期には「牛乳だけ」ではなく、さまざまな栄養をバランスよく摂取することが重要になります。
とはいえ、カルシウムは骨の形成に関わる重要な栄養素で、より多くの摂取量が求められるのは確かです。

牛乳のカルシウムの効果と身長との関係

牛乳に含まれるカルシウムには、骨を強くする効果があります。このような効果から、たくさん飲めば身長が伸びると思う方も少なくないようですが、牛乳に身長を伸ばす直接的な効果はありません。

しかし、骨が弱いと成長が抑制されたり、怪我をしやすくなる可能性があります。カルシウムを摂取することで、骨の正常な成長を助けられます。

身長を伸ばすには、骨の成長が欠かせません。骨の成長には、たんぱく質も重要といわれています。牛乳にはカルシウムだけでなく、たんぱく質も含まれているため、成長期の子どもにとって理想的な飲み物といえるでしょう。牛乳だけ飲んでも身長は伸びませんが、骨の形成や成長を助ける役割があるため、他の栄養素と合わせて積極的に摂りたい食品のひとつです。

成長に必要なカルシウムの摂取量の目安

成長期の子どもが1日に摂るべきカルシウムの摂取量は、600〜1,000mg程度です。200mlの牛乳に、約200mgのカルシウムが含まれています。例えばカルシウム1,000mgを1日で摂取するには、牛乳の約コップ5杯分となります。

ただしカルシウムは牛乳だけでなく、他の食品からも補うことが可能です。そのため実際には牛乳1日1〜2杯程度を目安とし、他の食事で補給してバランスのよい食事を摂ることが大切です。

牛乳以外でカルシウムを多く含む食品は?

カルシウムを多く含む食品は、牛乳だけではありません。牛乳と合わせて取り入れることでより効率よく、バランスよくカルシウムを補給できます。

また牛乳が飲めない、苦手な方も以下のような食品で補填できるでしょう。

  • 乳製品(チーズやヨーグルト)
  • 魚介類(小魚・干しエビ・イワシ・ワカサギなど)
  • 藻類(ワカメ・アオサ・青のりなど)
  • 豆類(乾燥おから・油揚げ・きな粉・納豆など)
  • ナッツ類(いりごま・アーモンド・クルミなど)
  • 野菜類(切り干し大根・パセリ・しそなど)

身長を伸ばすための3つのポイント

身長を伸ばすために重要なのは、食事・睡眠・運動です。それぞれ詳しく解説します。

バランスのよい食事

身長を伸ばすために必要な栄養素は、たんぱく質やカルシウムだけでなく、ビタミン・鉄分・亜鉛・マグネシウムなども必須の栄養素です。これらの栄養を複合的に摂取することで、身長を伸ばすための栄養補給となります。

牛乳だけでは、カルシウムやたんぱく質が摂取できても、マグネシウムやビタミンDが摂取できません。骨の土台はコラーゲンと呼ばれるたんぱく質からできており、いろいろな栄養素を補給することで吸収を高めたり、骨を強くできたりします。

多品目の食材を使うことで、さまざま種類の栄養素を補給しやすくなります。毎日の食事では主食、主菜、副菜とバランスよく摂取するように心がけましょう。

質の高い睡眠

質の高い睡眠は、成長ホルモンの分泌に欠かせません。小学生までは10時間以上の睡眠時間が推奨されています。

成長ホルモンの分泌量は睡眠中に最も増加し、骨の細胞分裂を促します。軟骨細胞が増殖することで骨が伸び、身長が伸びる仕組みです。成長ホルモンの分泌が最も活発になるのは深い眠りの時間であるため、睡眠の質が重要となります。

睡眠時間の確保はもちろん、睡眠の質を上げるためにも、寝る前のホットミルクがおすすめです。牛乳にはセロトニンやメラトニンの材料となる成分が含まれており、また温めることでリラックス効果も期待できます。

適度なストレッチや運動

適度な運動は、成長ホルモンの分泌を促すために役立ちます。また運動によって骨端線と呼ばれる軟骨組織に刺激を与え、丈夫な骨を形成します。

さらに、ストレッチも身長を伸ばすために効果的です。ストレッチをすることで姿勢が改善し、内臓機能が向上することで、栄養素の吸収を助ける働きも期待できます。
成長期に身長をしっかり伸ばすためにも、適度な運動やストレッチを習慣化することが重要です。

牛乳と合わせて摂取したい栄養素


身長を伸ばすための栄養素はさまざまですが、特にビタミンD・鉄分・亜鉛が重要といわれています。これらは骨組織の生成を加速させるために必須の要素です。

カルシウムの吸収を助けるビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、強い骨を維持するのに欠かせない栄養素です。牛乳と一緒に摂取することで、より効率的にカルシウムを摂ることができるでしょう。

特に次のような食品にビタミンDが含まれています。

  • イワシ・サンマ・カレイ・サケ
  • 干し椎茸・キクラゲ

また、人の身体は日光を浴びることで、体内でビタミンDを生成できます。多くの人は、日光に当たることでビタミンDの必要量の一部を得られるといいます。毎日30分程度の日光浴がおすすめです。

身体の成長に必要な鉄分

鉄分はミネラルのひとつで、成長期の身体づくりに必須の栄養素です。体内に酸素や栄養を運搬する役割を果たすのが血液ですが、鉄分はその血液を作る材料となります。成長期は身体を作るためにあらゆるエネルギーが体内に運ばれるため、鉄分が多く必要になる時期であるといえます。

また女性の場合、月経が始まることで鉄分不足になりがちです。特に次のような食品に鉄が含まれていますので、積極的に取り入れましょう。

  • ほうれん草・切り干し大根
  • ハム・レバー
  • 鶏肉・豚肉・牛肉・羊肉
  • 大豆
  • あさり缶詰
  • 海藻類

骨の成長を助ける亜鉛

亜鉛もミネラルのひとつですが、「必須微量ミネラル」といわれる体内で作ることができない栄養素です。骨の代謝を助ける働きがあり、骨組織の生成を促す効果が期待できます。

亜鉛の効果についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。

成長期の子どもの身長を伸ばすには亜鉛は効果的ですか?

特に次のような食品に亜鉛が含まれています。

  • 牡蠣
  • 豚レバー・牛の赤身
  • 小麦胚芽
  • 油揚げ
  • カシューナッツ

まとめ

牛乳は骨を強くする作用はありますが、直接的な成長促進作用はなく、牛乳をたくさん飲むだけで身長を伸ばすことは難しいといえます。ただし、牛乳に含まれるカルシウムやたんぱく質は、成長期に必要な栄養素であり、1日に1〜2杯程度の摂取が望ましいでしょう。加えて、他の食品から栄養を複合的に摂り入れ、バランスのよい食事と規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。

西新宿整形外科クリニックでは、身長にお悩みのお子さま向けに「成長ホルモン治療」を提供しています。十分な栄養を摂っていたとしても、成長ホルモンが十分に分泌されてないと身長が伸びない原因となります。食事や生活習慣を改善しても効果が見られない場合は、成長ホルモン治療も選択肢のひとつです。少しでも気になったら、当院の無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。

小児低身長(成長ホルモン治療)について詳しくはこちら

監修医情報

西新宿整形外科クリニック院長
沼倉 裕堅 医師
ぬまくら ひろかた/Hirokata Numakura
経歴
東北大学医学部医学科 卒
湘南藤沢徳洲会病院 内科・救急科・整形外科
いわき市医療センター 整形外科
竹田綜合病院 整形外科
山形市立病院済生館 整形外科
Mahidol Univ. Ramathibodi hospital 整形外科(タイ)
いしがみ整形外科クリニック
西新宿整形外科クリニック

運営者情報

運営クリニック 西新宿整形外科クリニック
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院長 沼倉 裕堅 医師