筋トレをすると身長が伸びないって本当?筋肉と身長の関係
筋トレをすると、筋肉が分厚く太くなって強化されます。
そうなると、お子さんの骨の成長を阻害し身長の伸びが悪くなるのでは?と親御さんは心配されるでしょう。
しかし、実は筋トレが骨の成長を邪魔する根拠というのはありません。
身長が伸びる仕組み
身長が伸びるのは、「骨端線」という組織が関係しています。
骨端線は、骨と骨との間に存在する骨端軟骨の集合体であり、軟骨が作られて積み重なり、硬くなって骨へと変化することで伸びていくのです。
大人の身長が伸びないのは、骨端線の成長が止まるためです。
筋トレにより筋肉が増えても、骨端線の成長にほぼ影響はないため身長が伸びにくいということは考えられません。
骨が成長する力は、筋肉の力よりかなり強いので、筋肉で骨の成長力を押さえつける、阻害するのはそもそも困難だという研究データもあります。
むしろ筋トレは、筋肉修復時に軟骨細胞を活性化する成長ホルモンが分泌されるため、骨の成長には有効的ともされています。
脳の下垂体から分泌される成長ホルモンは軟骨細胞の分裂、増殖を促す作用があります。
筋トレをおこなうと、筋肉に負荷がかかって破壊され、新たな筋肉を合成しながら強化されていきますが、この筋肉の修復にも成長ホルモンは使われているのです。
筋トレをおこなううえで適切な負荷のかけ方
筋トレでの最適な負荷のかけ方は、「PHV(Peak Height Velocity=最大発育速度)」前後で異なります。
PHVは発育のピークを意味し、日本人の場合、男子は平均13歳、女子は平均11歳といわれています。
以下は、カナダ・サスカチュワン大学によるPHV予測計算ツールで、性別や年齢、身長、体重、座高などをもとにPHVの年齢を予測できます。
Prediction of Age of Peak Height Velocity
まずは、こちらのツールを使ってお子さんのPHVを予測しましょう。
続いて、PHV前後で次のように負荷を変えて筋トレをおこないます。
- PHV前
頻度については諸説ありますが、週1回程度という意見も見受けられます。
PHV前では筋力の急激な向上は望めないため、動きの質をよくすることを目的に自重筋トレをおこなうのがおすすめです。 - PHV後
週2〜3回程度の頻度で筋トレをおこなってもよいでしょう。
PHV後では、ある程度の負荷をかけながらの筋トレが可能です。
成長とともに、様子を見ながら徐々に負荷を増やして筋トレをおこないます。
身長を伸ばすおすすめの筋トレや運動
では、身長を伸ばすのにおすすめの筋トレや運動を、具体的に紹介します。
自重筋トレ
成長期には、自身の体重を利用した自重筋トレがおすすめです。
具体的には、腕立てや腹筋、スクワットなどが挙げられます。
バーベルやマシンを使った高重量の筋トレは、かえって身長の伸びを妨げるリスクが高いためおすすめしません。
これについては、のちほど「過度な筋トレは身長を伸ばす妨げになる」の項目で詳しく説明します。
全身を使う跳躍系の運動
骨の成長に関してとくに身長を伸ばすには縦方向の動きがある、跳躍系や全身を使うスポーツがよいとも言われています。
たとえば、バスケットボールやバレーボール、水泳などが挙げられます。
骨の中でも、身長の伸びと関係するのは背骨や大腿骨などです。
運動により上に引っ張られる力が加わることで、骨端線が刺激をうけやすく、骨端細胞がより活性化するためだと言われています。
ただ一概には言えないため、バスケットボールなどを頻繁にやっていても思うように身長が伸びないケースもありますが、一般論としては伸びやすいとされているのです。
過度な筋トレは身長を伸ばす妨げになる
基本的にスポーツは骨の成長には効果的ですが、やり方を間違ったり、やりすぎたりすると逆効果になる場合もあるので注意しましょう。
中には、関節や骨など偏った負荷がかかるものもあるので気をつけなけらばなりません。
骨の元となる軟骨細胞は柔らかく、もろくて衝撃には弱いのが特徴です。
そのため、集中的にしかも長期にわたって重い負荷を与え続けると、損傷や変形が起こり、増殖活動が滞って骨が伸びにくくなる可能がはあります。
筋トレの中でもダンベルを持ち上げたり、鉄アレイを持ったりなど負荷をかけて長時間うさぎ跳びやスクワットを行うといった筋トレは、関節などを傷めるリスクが高いため、子供の頃は控えたほうがよいと言えるでしょう。
また、マラソンなども長時間にわたり多くのエネルギーを消費し、膝などに負担がかかりやすい運動です。エネルギーを大量消費すると、脳や体が栄養不足となり成長ホルモンが分泌されにくくなり、骨の成長にも影響を及ぼすとされています。
さらに、幼少期から成長期にかけての子供の体は未発達なので、大人と同じような筋トレを課すのは、骨以外にも運動機能を損なうリスクがあります。
大人のように加圧マシンを使った筋トレはやめ、腕立て伏せや腹筋など自身の体重を使った筋トレが適していると言えます。
そして、低年齢期というのは筋肉を作るホルモンの分泌量が少なく、筋トレをせっせと行っても作られる筋肉量には限界があるのです。
そのため、きちんと筋トレを行うのはホルモン分泌量が増え始める、10歳以上の第二次性徴以降が適していると言えます。
先述したPHVも考慮し、年齢に合わせて適切な負荷で筋トレをおこないましょう。
まとめ
骨端線という軟骨組織が成長することで身長が伸びますが、筋トレによって骨端線の成長が阻害されることはありません。
むしろ、適度な筋トレにより成長ホルモンが分泌され、骨端線の成長によい影響を与えます。
成長期には、腹筋やスクワットなどの自重筋トレのほか、跳躍系の運動もおすすめです。
過度な筋トレは軟骨や関節にダメージを与え、かえって骨の成長を阻害するおそれがあるため避けましょう。
西新宿整形外科クリニックでは、成長ホルモン投与による小児低身長の治療をおこなっています。
痛みをほとんど感じないため、お子さまでも安心して受けられる治療です。
「いろいろ試してみたけど、なかなか身長が伸びない」とお悩みのお子さまや親御さんは、一度無料カウンセリングでご相談ください。