ぶら下がり運動をしても、身長が伸びるということはないのです。
ひと昔前に、身長を伸ばす健康器具として、「ぶら下がり健康器」がブームになった時代がありましたが、ぶら下がり運動をすることで、本当に身長が伸びるのでしょうか?
「ぶら下がり運動で身長が伸びた!」の真実とは?
「成長ホルモン」はその名の通り、子供が成長していく上でもっとも重要な役割を果たすホルモンです。
なんらかの理由でこの成長ホルモンの分泌が少なかったり、または分泌されていなかったりする場合に、それを補充するための「成長ホルモン治療」を行います。
背が伸びるというのは、骨が長く成長するということ。成長過程にある子供の骨には、「骨端線(成長線)」と呼ばれる軟骨層があります。
この軟骨層の軟骨細胞は、「成長ホルモン」などの働きによって、層のように積み重なって増殖し、骨が伸びていくのです。
このように、背が伸びるというのは、軟骨細胞が増殖するということですが、ぶら下がり運動をしたからといって、軟骨細胞の増殖が活性化するとは考えられません。
ですから、ぶら下がり運動をしても、身長が伸びるということはないのです。
ちなみに、成長するに従って、骨端線の軟骨層は少なくなっていきます。
そして、軟骨層がすべて硬い骨に成長すると、骨端線がなくなり、それ以上は、骨が伸びることはありません。
つまり、骨端線が閉じると、身長もそこでストップするということ。大人になると、背が伸びなくなるのは、このためです。
「ぶら下がり運動で、身長が伸びることはない」とお話しましたが、中には、実際にぶら下がり健康器を使ってみたときに、背が伸びたように感じた経験がある人もいるかもしれません。
ぶら下がり運動をしても、骨が長く成長することはありませんが、一時的になら、背が高くなったように感じる可能性はあります。
「軟部組織」の膨張
私たちの背骨は、頚椎(けいつい)から骨盤まで、合計24個の骨がつながってできており、その1つ1つの骨の間に、クッションの役割をする「椎間板(ついかんばん)」という軟部組織が挟まっています。
そしてこの軟部組織には、伸びたり、縮んだりするという性質があるのです。
人の身長は、朝は高く、夜は低くなるという傾向があり、その差は1〜2cmほどありますが、これも、軟部組織の伸び縮みによって起こる現象です。
軟部組織が寝ている間に伸びるので、朝は背が高くなり、日中活動している間に縮むので、夜は背が低くなるというわけです。
同じように、ぶら下がり運動を長時間続けていると、この軟部組織が伸びるので、背が高くなったように感じるのです。
ただし、これは一時的な現象なので、時間が経てば、元に戻ります。
また、ぶら下がり運動をしたことで、背筋が伸びて、姿勢が改善されたことも、背が伸びたように感じる理由の1つかもしれません。
もちろんこれも、実際に骨が長く成長したわけではありませんが、猫背でいるよりも、胸を張って背筋を伸ばしているほうが、見た目の身長は、高くなったように感じます。