成長ホルモンの分泌が少なかったり、または分泌されていなかったりする場合に、「成長ホルモン治療」を行います。
低身長症の代表的な治療法である「ホルモン治療」とはどのような治療法なのでしょうか。
具体的な治療の内容と、ホルモン治療が適応になるケースについてご紹介していきます。
低身長症におけるホルモン治療
「成長ホルモン」はその名の通り、子供が成長していく上でもっとも重要な役割を果たすホルモンです。
なんらかの理由でこの成長ホルモンの分泌が少なかったり、または分泌されていなかったりする場合に、それを補充するための「成長ホルモン治療」を行います。
成長ホルモンはタンパク質でできているので、飲み薬で補充しても、胃でアミノ酸に分解されてしまい、成長ホルモンとしての効果が得られません。
このため、成長ホルモン治療では注射器を使います。
また、成長ホルモンは、毎日寝ているときに分泌されるホルモンですが、1日経つと消失してしまいます。
このため治療でも、まとめて投与することができず、ほぼ毎日、寝る前に自宅で注射をします。
利用する注射は、針が非常に細いペン型の注射器で、ある程度の年齢になればお子さんが自分で打つこともできます。
成長ホルモン治療を始めると、1〜2年の間に急速に身長が伸び、その後は伸び方がゆるやかになっていきます。
しかし、根気よく治療を続けることで少しずつ背が伸びていきます。
思春期を経て骨が成熟し、骨の端にある「骨端線(成長線)」という部分が閉じれば、これ以上身長が伸びなくなるので治療が終了します。
しかし、治療によって十分に身長が伸びた場合や、成長速度が遅くなった場合など、医師の判断で、骨端線が閉じる前に治療を終了することもあります。
ホルモン治療の対象となる低身長症
成長ホルモン治療の治療対象と認められているのは、次の疾患です。
成長ホルモンの分泌が低下したり欠如したりすることで、身長が伸びず低身長になる病気です。
そのほとんどは、原因がよくわらない「特発性」ですが、頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍などが原因の「器質性」のものもあります。
また、ごく稀ではありますが、遺伝子異常など、遺伝的な要因によって起こるケースもあります。
「ターナー症候群」とは、女性だけに見られる先天的な病気で、染色体異常が原因で起こります。
首の周りの皮膚がたるむ(翼状頸)、ひじから先の腕が外向きになる(外反肘)、二次性徴の遅延(乳房の発育や月経がこない)などの特徴が見られ、低身長もその1つです。
また一生のうちに、中耳炎や難聴、骨粗しょう症、糖尿病、高血圧、甲状腺機能低下症などの合併症が現れることもあります。
腎臓が正常に機能せず、尿がうまくつくれなくなることで、体内に有害物質が溜まり、発育を妨げられる病気です。
軟骨の成長に関連のある遺伝子の異常によって起こる病気で、軟骨の増殖がうまく進まないので、主に手足の骨が短くなり、重症の低身長になります。
乳幼児期に筋緊張低下や哺乳障害、幼児期から過食傾向、精神発達遅延、学童期には、肥満、低身長、性格障害などの症状が現れる病気で、遺伝子の欠損や突然変異などによって起こることがわかってきています。
約16,000人に1人に発生すると推定されており、非常にまれな病気です。
「SGA」とは、お母さんのお腹の中にいた期間(在胎週数)に相当する標準身長・体重に比べて、小さく生まれたことを言います。
同じ在胎週数の100人の子どもがいたときに、その中で、小さい方から9番目までをSGAと呼びます。
SGAとして生まれた子供の約90%は、2〜3歳になるまでに、成長が正常な範囲に追いつきます。
しかし、この時期になっても、成長が追いつかなかった場合を「SGA性低身長症」と言います。