身長が伸びる仕組みを理解しよう
身長が伸びるためには、土台となる骨の成長が欠かせません。人間の体は、新生児では約350個、大人では約200個の骨で構成されています。大人になると数が減るのは、成長の過程で骨が融合していくためです。
X線写真をみるとよくわかるのですが、子どもの骨の端は隙間のようにみえる部分があります。この部分が骨端線(こったんせん)です(図1)。骨端線は成長軟骨帯とも呼ばれる軟骨組織で、成長期にはこの軟骨が増殖しながら骨に置き換わって伸びていきます。このことを「骨端線が開いている」と表現します。
成長するにつれ、軟骨層が少なくなり、最終的には軟骨が硬い骨に置き換わり、骨端線はみえなくなります。これを「骨端線が閉じる」といいます。骨端線が閉じると、骨は伸びなくなり、身長も伸びなくなります。骨端線が閉じる(成長を止める)メカニズムは完全に解明されていませんが、性ホルモンが影響していることがわかっています。
図1 子どもと大人の骨の違い
成長の時期を見きわめて適切に
正常な子どもの成長パターンについて、スウェーデンのヨハン・PE・カールバーグがICPモデルという3つの時期を提唱しています(図2)1)。
図2 ICPモデルによる1年あたりの身長の伸び(図中ではポイントとなる時期の身長の伸びを示しています)
身長の伸び方は上記の3つの時期で異なっていて、時期によって身長の伸びに影響を与える要素も異なっています。
生後から1歳ごろまで急激に大きくなり、その後ゆるやかに成長を続ける乳幼児期は、男女差はあまりなく、栄養摂取状況が大きく影響します。乳児のときに母乳(ミルク)の摂取量が少ない子どもはこの時期の成長スピードが遅い場合があります。そうした子どもを含め、幼児期では、できるだけバランスのよい栄養摂取が望まれます。
前思春期の成長には、脳下垂体から分泌する成長ホルモンと甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが影響します。成長ホルモンは、骨端線にも作用して身長も徐々に伸びていきます。
甲状腺ホルモンは体の代謝を促すとともに、骨の成長にも影響します。ホルモンの分泌を促す特効薬はありませんので、栄養バランスのよい食事を摂り、外で適度な運動をして、ぐっすりと睡眠をとるといった生活習慣が重要となります。
思春期になると、成長スピードがまた加速します。この時期は成長ホルモンに加えて、性ホルモンの影響が強く、男子は精巣の成熟とともに、女子は卵巣の成熟により性ホルモンが分泌され、身長が伸びます。この時期の身長の伸びは、ラストスパートと呼ばれています。その後、二次性徴(生殖器以外の男女の特徴)があらわれ、やがて骨の成長が止まり、身長はあまり伸びなくなります。
すべての子どもが同じように成長するわけではありません。子どもの成長の時期は、限られています。受診が早すぎることはありません。少しでも不安を感じたら、専門医の診断を受けてみてはいかがでしょうか。
1)Karlberg J, Acta Paediatr Scand Suppl. 1989; 356: 26-37.