成長の経緯を記録することが大切
子どもの身長が伸びず、低身長を疑っている場合、成長曲線のグラフに子どもの身長を記録していくことが勧められます。このグラフは子どもの成長を客観的にみるための貴重な資料であり、医師にとっても重要なデータになります。
成長曲線は下記のホームページからダウンロードできます。
日本小児内分泌学会
男子(0~18歳):http://jspe.umin.jp/public/files/kyokusen0-18_1.pdf
女子(0~18歳):http://jspe.umin.jp/public/files/kyokusen0-18_2.pdf
成長曲線の横軸は年齢で、ひと目盛は3か月になります。できるだけ正確にポイントを入れて曲線を描くことが大切です。
成長曲線のグラフには、全国の子どもたちのデータをもとに指標となる標準の成長曲線が描かれています。標準の曲線と大きな相違がなければ、子どもの成長に異常はないということになります。
この成長曲線の指標は2000年のデータが使用されています。ここ20年近く、日本人の成人の平均身長は頭打ち状態であることから、日本小児内分泌学会と日本成長学会では、当分の間、このデータを使用することとしています。
SDスコアで-2.0以下が低身長
成長曲線のグラフには、平均値のラインとは別に、+1.0SD、+2.0SD、-1.0SD、-2.0SD、-2.5SDなどのラインも描かれています。これは、「身長SDスコア」を示すラインです。SD(standard deviation)とは、標準偏差といって、データのばらつきをあらわす数値のことです。たとえば、ある学校のクラス全員が同じ身長(つまり全員が平均値)の場合、データにはばらつきがないので、SDは 0 です。平均値よりも高い場合は+SDとなり、低ければ-SDとなります。平均値を中心に-1.0SDから+1.0SDの間に68.3%の人が収まり、-2.0SDから+2.0SDの間に95.4%の人が収まります。臨床的には-2.0SD以下が低身長と診断されるので、-2.0SDのラインの下になっていないかどうかを確認します。
身長SDスコアは、計算によって求めることもできます。
計算式で用いる平均身長と標準偏差は、日本成長学会のホームページで参照できます。
平均身長と標準偏差
(体重についても記載されています)
http://auxology.jp/application/files/7714/8421/0637/fuhyo1.pdf
たとえば、ある6.0歳・男子の身長が100cmだったとします。同年齢の身長の平均値は113.3cm、SD値は4.8ですから、(100-113.3)÷4.8の計算式によって-2.8という身長SDスコアが得られます。この数値は低身長の診断基準に該当しますので、一度、受診する必要があると考えられます。
成長曲線を記入してわかること
成長曲線を描くと、子どもの身長の相対的な評価がわかりますが、それだけでなく、成長の推移も把握できます。小さいときから身長が低いのか、あるいはある時期から目立って身長が伸びていないのかといったことが確認できます。
低身長の原因となる病気はいろいろありますが(表1)、思春期になると、成長ホルモンによる治療はできなくなるので、早期に異常を発見して、適切に対応することが大切です。
表1 低身長になる主な疾患
●成長ホルモン分泌不全性低身長症……成長ホルモンの分泌が少ないため低身長になる。
●ターナー症候群……女性のみに発症する。X染色体の一部あるいは1本が欠損していることによって起こる。 ●プラダ―・ウィリー症候群……乳幼児期には筋緊張低下、3~4歳以降は肥満、精神的な発達遅延、低身長などの特徴的な症状が現れる。 ●軟骨無形成症……骨そのものの疾患。手足が短くなり低身長になる。 ●SGA性低身長症……子宮内での発育が悪く、新生児以降も低成長が続く。 |
《参考文献》
田中敏章(著), 子どもの身長を伸ばす本. 講談社 2011