身長を伸ばすために重要な要素のひとつが睡眠です。しかし、ただ寝るだけで身長は伸びるのでしょうか。今回は、睡眠と身長の関係やその効果、さらに身長を伸ばすための最適な睡眠時間と質を向上させる方法についてご紹介します。
目次
「寝る子は育つ」睡眠と身長の関係とは?
「寝る子は育つ」という言葉が示すように、睡眠と身長には深い関係があります。身長を伸ばすために欠かせないのが成長ホルモンで、このホルモンが分泌されることで骨が成長し、身長が伸びます。成長ホルモンは睡眠中、特に深い眠りに入っているときに最も多く分泌されるため、十分な睡眠を取ることは成長期の子どもにとって重要な要素となります。
逆に、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が十分におこなわれず、骨の成長が抑制されて身長が伸びにくくなる可能性があります。
身長が伸びるメカニズム
そもそも身長はどのように伸びるのでしょうか。
骨の端には「骨端線」という軟骨組織があり、これが骨組織を生成することで骨が成長し、身長が伸びます。この骨端線は、成長ホルモンや甲状腺ホルモン、性ホルモンなどの影響と、食事で摂取する栄養素によって成長が促されます。
しかし14〜15歳の年齢を過ぎると骨端線が閉じてしまい、身長の伸びは低くなっていきます。成長ホルモンの量には個人差があり、ホルモンの分泌量が少なく身長が低いまま成長期を終えるケースもあります。
身長を伸ばす以外の睡眠がもたらす効果
睡眠がもたらす効果は、身長を伸ばすことだけに留まりません。細胞の新陳代謝が促進され、疲労回復を助ける効果もあります。
さらに良質な睡眠が取れると、朝のパフォーマンスが向上し、1日をよい状態でスタートできます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針 2014」によれば、質のよい睡眠を取ることは、生活習慣病の予防にもつながるとされています。
身長を伸ばし、健康的な身体を作るためにも、特に成長期の睡眠時間や睡眠の質にはこだわるべきといえるでしょう。
身長を伸ばす最適な睡眠時間【年齢別】
具体的に「十分な睡眠時間」とはどのくらい必要なのでしょうか。
実は年齢によって、以下のように異なります。
- 小学生:9〜11時間
- 中学生:8〜11時間
- 高校生:7〜10時間
さらに学年によって必要な睡眠時間は細かく分かれますが、上記の睡眠時間がひとつの目安です。年齢が若いほど、必要な睡眠時間は長くなっています。
現代の子どもは、塾や習い事で帰宅時間が遅くなりやすく、特にスマホを持っている子は睡眠時間が短くなる傾向にあります。睡眠は、身体の成長に重要な役割を果たすため、なるべく上記の睡眠時間を確保できるようにしましょう。
何時までに寝るのが効果的?
就寝時間に関しては、何時までに寝るべきかといった明確な時間はありません。ただし、十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を送るといった観点でいうと、夜10時頃に就寝するのが望ましいでしょう。
かつては、夜10時から夜中の2時が「睡眠のゴールデンタイム」とされ、この時間帯に成長ホルモンが多く分泌され、身長が伸びやすいといわれていました。しかし、実際には、特定の時間に成長ホルモンが多く分泌されるわけではなく、眠り始めの最初の2〜3時間が最も分泌が活発になるタイミングです。
身長を伸ばすために重要な「睡眠の質」とは
単純にたくさん寝ればよいわけではなく「睡眠の質」が重要になります。なぜなら深い眠りについている間に、成長ホルモンの分泌が最も促進されるからです。
不眠症などの問題がない方の場合、最も深い眠りに入るのが眠り始めの2~3時間です。眠りが浅い「レム睡眠」と、眠りが深い「ノンレム睡眠」が存在し、ノンレム睡眠時には、血圧や心拍、体温が低下し、脳も休息状態になります。
深い眠りに入ると、副交感神経が優位になり、成長ホルモンの分泌が促されます。しかし、眠り始めの2~3時間の間に起こされたり、刺激を受けたりすると、交感神経が活発になり、成長ホルモンが十分に分泌されにくくなってしまいます。
身長を伸ばすためには、深い眠りにつけるように、睡眠時間だけでなく、睡眠の質を高めることも重要となります。
睡眠の質を上げる6つの方法
就寝前の行動や睡眠環境のちょっとした工夫で、睡眠の質の向上が期待できます。
よく眠れない、眠りが浅いという場合は、次の6つの方法を取り入れてみましょう。
湯船に浸かる
就寝前にお風呂に入ることで体温を上げ、心身の疲れを取ってリラックスすることは、睡眠の質向上につながります。特に就寝前の1〜2時間前に湯船に浸かるのがおすすめです。
湯船でいったん体温を上げ、お風呂から出たあとに体温が下がることで眠りやすくなります。またリラックス効果で副交感神経が優位になり、寝つきやすくなるといえます。
部活などで帰宅後、お風呂に入らず寝落ちしてしまうケースもあるでしょう。しかし疲れや汚れを取れないままだと睡眠の質が落ちる可能性もあるため、お風呂に入ってからの就寝が推奨されます。
軽くストレッチする
就寝前の軽いストレッチは、疲労が溜まった筋肉をほぐし、身体を落ち着かせる効果があります。ゆっくり自分のペースで呼吸をしながらおこなうことで、心拍数も整います。
ただし、汗をかくほどの激しいストレッチは、反対に交感神経を刺激してしまうため控えましょう。
身長を伸ばすストレッチは下記の記事で詳しくご紹介しています。
就寝前のスマートフォンをやめる
パソコンやスマートフォン、ゲーム、テレビの画面などの操作は、眠る2時間前は控えましょう。強い光を浴びると、交感神経を刺激してしまいます。特にスマートフォンのブルーライトなどは、睡眠の質を下げる原因となります。
寝る3時間前までに夕飯を済ませる
食後の3時間程度は、消化するためにエネルギーを使うことになります。睡眠は臓器や脳を休める時間でもあるため、臓器が消化のために活動している間は、睡眠の質が下がってしまいます。
夕飯を就寝の3時間前に済ませておくことで、身体をゆっくり休めて深い眠りにつくことができます。
睡眠環境を整える
身体に合わない寝具は首や肩、背中に負担がかかり、睡眠の質を下げてしまいます。自分に合った枕やマットレスなどを揃えましょう。
また、部屋の温度や音、照明などを工夫して、眠りにつきやすい睡眠環境を整えることも重要です。寝苦しい夏はエアコンで温度を調整したり、カーテンを使って外からの光や音を遮断したりすることも有効です。睡眠環境を快適に整えることで、睡眠の質を上げられます。
ホットミルクを飲む
就寝前にホットミルクを飲むことで、睡眠の質の向上につながります。
牛乳には、セロトニンやメラトニンといった睡眠に関わるホルモンの材料となる成分が含まれています。また、温めた牛乳を飲むことで一度体温が上がり、その後ゆっくり下がることでリラックス効果が得られ、睡眠の質を上げられるといえます。
まとめ
睡眠と身長には深い関わりがあり、成長期に十分な睡眠時間と質を確保することが身長を伸ばすカギとなります。小学生に推奨される睡眠時間は、9〜11時間程度です。加えて睡眠の質も重要となります。十分な睡眠の質と量が得られるように生活習慣も整えていきましょう。
西新宿整形外科クリニックでは、身長にお悩みのお子さま向けに「成長ホルモン治療」を提供しています。何らかの原因で不足している成長ホルモンを補充し、軟骨の成長を助けて身長を伸ばす治療です。成長ホルモンの量は個人差があります。睡眠時間を確保しても身長が伸び悩む方は、成長ホルモン治療を選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。