日光浴自体に身長を伸ばす効果はありません


勘違いしてはならないのが、日光浴自体に身長を伸ばす作用がないということです。
日光浴をすると体内でビタミンDが合成されますが、このビタミンDが骨の成長させるためには必要不可欠です。

しかし、たとえビタミンDを大量に摂取したとしても、成長がより促進する作用があるというエビデンスはありません。
ビタミンDの合成は骨を強くするためであって、成長促進目的で摂取するわけではないのです。

ビタミンDは日光浴で合成することができるビタミンです

ビタミンDはカルシウムのバランスを整える働きがあり、骨を強くするために必要なビタミンです。
そのため身長を伸ばすために必要だともされています。

ビタミンDは食べ物から摂取する方法と、体内で合成する方法があります。
日光浴は紫外線からビタミンDを生成してもらう方法です。
食べ物に含まれるビタミンDとは、ビタミンD2やビタミンD3のことで、体内で合成されたものもビタミンD3に変わっています。

人が得ているビタミンDで大きな供給源は日光浴によるもので、太陽の光に当たることは重要です。
体内で合成されるビタミンDは、紫外線のUV-B派によるものです。

UV-B派は服やガラスを通すことができないため、長時間屋内で過ごす人は、ビタミンD合成が不足してしまいます。
必ず外出の際に日焼け止めを塗る方も、ビタミンD合成が足りない可能性があるでしょう。

紫外線は体に有害なことはよく知られていますが、人が必要とするビタミンD合成は、1日30分程度の日光浴で十分です。
強い紫外線の時間帯を避けて日光浴をすることで、必要なビタミンDは得ることができます。

季節によっても紫外線量が変わっており、冬季は紫外線の量が減ってしまうため、夏の同じ時間の日光浴をしても、ビタミンDが不足している可能性があります。

小児に日光浴が必要なのはくる病予防のためです


子どもの日光浴が重要だとされているのは、骨を伸ばす目的ではなく、ビタミンD不足によるくる病予防のためです。
くる病とは、紫外線を浴びる時間が少なく体内でビタミンDが生成されないのが原因です。

以前は食事事情により小児のくる病が問題とされていましたが、近年は過度に日光浴を避けることで、くる病になる可能性があります。
ビタミンDが不足するとカルシウムが骨に沈着できず、骨が柔らかくなってしまいます。

すると骨の変形や成長阻害をともなうため注意が必要です。
骨に十分な硬さが得られないと、1歳くらいになり歩くことで足に負担が増し、O脚になってしまいます。

子どものくる病は現代でも見られる病であり、珍しい病気ではありません。
血中ビタミンD濃度が低く、足にO脚がみられる場合はくる病を疑う必要があります。
どのくらい日光に当たればくる病を防げるという明確な基準はありません。

目安として1日数分くらいの日光浴が必要だと考えられています。
地域によっても基準が異なり、那覇市で14分の日光浴で十分でも、札幌市で同等の生成とするには139分必要です。

ビタミンDは、鮭、うなぎ、さば、きくらげ、卵などからも摂取できるため、不足しやすい地域では食品から取り入れることが必要となります。
魚介類に多く含まれており、和食を多く取り入れることで解消しやすいでしょう。

子どもの成長にも日光浴が必要です

紫外線による体への悪影響が知られるようになり、母子手帳にも日光浴という言葉が消え、外気浴という表現に変わってきています。
そのような理由から、紫外線を極力避ける育児中の方も増えており、日光浴によるビタミンD合成力が低下していることが指摘されているため注意が必要です。

小児の場合は、母乳育児を通して栄養を補給しており、母親が紫外線を極端に避けることでも、ビタミンDの摂取量が減ってしまいます。

離乳食が始まれば食品からもビタミンDは摂取できますが、アレルギーを持つ子どもは食事制限を余儀なくされ、食べ物からの摂取量も減っている可能性があるのです。
卵や魚は重要なビタミンD補給源となっていますが、これらは同時にアレルゲンとなるリスクもあるため、食べられない子どももいます。

アレルギーがある子どもは、サプリメントなどでビタミンDを補うことも考える必要があるでしょう。
日光浴を取り入れる場合は、肌が赤くなるほど取り入れる必要はなく、早朝の紫外線が少ない時間帯に、数分程度散歩に出るだけでも十分です。

ただし、冬季間の北日本は日光浴だけではビタミンDが不足する可能性があるため、その場合はサプリメントなどで補う方法も考えなければなりません。

(まとめ)身長を伸ばすには日光浴が必要ですか?

1.日光浴自体に身長を伸ばす効果はありません

日光浴をすれば体内でビタミンDが合成され、骨を強くする作用があります。ビタミンDが骨の成長を促すエビデンスはなく、大量に摂取したとしても身長を伸ばす効果は期待できません。

2.ビタミンDは日光浴で合成することができるビタミンです

ビタミンDはカルシウムのバランスを整え、骨を強くするためのビタミンです。食べ物から摂取する方法と、日光浴で紫外線を浴びて体内で生成する2つの方法があります。
紫外線のUV-B派により生成されており、UV-B派は服やガラスを通しません。

3.小児に日光浴が必要なのはくる病予防のためです

子どもに日光浴が重要なのは、骨が柔らかくなり変形してしまう、くる病予防のためです。日光浴の時間が少ないと体内でビタミンDの生成量が減り、カルシウムが骨に沈着できず、骨が柔らかくなってしまいます。

4.子どもの成長にも日光浴が必要です

紫外線の有害さが知られるようになり、日光浴を避ける子育て家庭も増えています。日光浴でビタミンDを合成することは子どもにも必要なことですから、食事や日光浴で促す必要があるでしょう。

監修医情報

西新宿整形外科クリニック院長
沼倉 裕堅 医師
ぬまくら ひろかた/Hirokata Numakura
経歴
東北大学医学部医学科 卒
湘南藤沢徳洲会病院 内科・救急科・整形外科
いわき市医療センター 整形外科
竹田綜合病院 整形外科
山形市立病院済生館 整形外科
Mahidol Univ. Ramathibodi hospital 整形外科(タイ)
いしがみ整形外科クリニック
西新宿整形外科クリニック

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院長 沼倉 裕堅 医師